クーリングオフとは,クーリングオフやり方

「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第60号)が公布

クーリングオフ・中途解約制度にかかる法令が,消費者保護の強化の観点からさらに改正された。

一部を除き(改正民法施行と同時に施行),本改正法は平成29年12月1日から施行(適用される)

主な改正点として,

  1. 業務停止命令違反に対する懲役刑の上限を2年から3年に引上げ
  2. 業務停止を命ぜられた者・法人と同等の支配力を有すると認められた者が,新たにお店の代表者や法人の株主その他の会社の役員等に就任して営業活動を行ってはならないのに→違反した場合、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金,法人は3億円以下の罰金
  3. 不実告知等に対する法人への罰金を300万円以下から1億円以下に引上げ
  4. 不実告知違反事業者が行政処分を受けた場合に,当該事業者自身が,現在の既存顧客に対して,不実告知違反があって当該行政処分を受けた旨の事実を,他の既存顧客に通知をするよう,行政処分として指示できる規定の明確化を為した。例えば,不実告知違反により行政処分を受け,又は罰金100万円等の行政処分を受け,この事実を他の既存顧客に通知して知らせるように指示命令がされたのに,事業者が既存顧客に対し,「この度,不実告知により行政処分がなされました。お客様へ弊社のサービス・商品に関し,不実告知をしていた内容は,以下のとおりです,・・・・・」等との通知をしなかった場合(当該行政処分の指示違反をした場合)→業務停止命令及び刑事罰(個人は6月以下の懲役又は100万円以下の罰金,法人は100万円以下の罰金(指示違反行為に懲役刑を追加)とした。
  5. 原則として,消費者が日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等について,行政処分(指示等)の対象とするとともに,申込みの撤回又は解除を行うことができるようにした。  例えば,①寝具につき,一世帯一人当たりに,短期間で4,5セット等,②化粧品につき,短期間で,相当容量の化粧水と乳液それぞれ50本等,(著しく超えるかどうかについては,数量及び期間等,個別の事案において,営業様態,購入事情,必要性などを考慮して判断されると考えられる。)
  6. 不実告知,故意に事実を告げない営業行為により事実と誤認してした当該契約にかかる意思表示の取消権の行使期間を6カ月から1年に伸長。

 

 本改正の罰則強化を見れば,刑法の詐欺罪に問われそうな民事事件を特別法で刑事罰を強化するいう行政側の厳しい態度で臨むという意気込みを受け止められる。 一応,経緯,背景,様態,行為の悪質性,消費者側の落ち度等も勘案するが,事業者側の態度によっては,一度,深い反省をさせるという措置であろう。

 

 平成20年,24年の特定商取引法改正により,これまで,クーリング・オフの規制対象(原則8日間以内又は20日以内に解約できる)の商品・サービスを法令で指定したものを廃止して,公的サービス・商品等の本クーリングオフ制度を除外するものを逆に法令で定め,これらの除外された公的サービス・商品を除き,全ての商品・サービスをクーリング・オフ制度の対象にした。

 

 昭和51年からの訪問販売法に存在した法の抜け道や死角を無くし,いわゆる貴金属の「押し買い」の被害も平成23年に4,142件と2年前の32倍となった背景から,消費者が,訪問されて業者に販売した商品を取り返すことが可能になっていた。

  

 私達の日常的な取引,契約に通常適用される民法,会社法に優先される特定商取引法は,この平成20年,24年,28年の法改正によって,消費者の消費活動を極めて積極的に保護するようになったし,2022年までの成人年齢を18歳以上との改正民法制定施行がされる頃には,さらなら厳罰化が規定されるであろう。デート商法や一部の出会い系サイトでみうけられるような「消費者を欺罔に陥れて」財物を得る営業活動については,厳格な改正も予想されるところだ。