ネットオークションの事業者とは
「個人だから・・」は,消費者とトラブルがあった場合には通用しない。
法人・個人を問わず,利益を得る目的で,一定の継続的な販売は「事業者」と看做される。
クーリングオフ,中途解約の制度では,必要的広告表示事項の表示(特定商取引法第11条)及び誇大広告等の禁止(同法第12条)等の義務が課せられている。
トラブルが生じた時に,「個人のオークションだから・・」(法人でも)「いつもと違う商品をたまたま・・・」として,あたかも事業者ではないので,法令が適用されません,とは安易に回答できない。
インターネット・オークションを通じて販売を行っている場合であっても,営利の意思を持って反復継続して販売を行う場合は,法人・個人を問わず事業者に該当し,特定商取引法の規制対象になる。 (この場合,商品が中古品であれば「古物商営業許可」の問題も発生する。)
経済産業省のガイドラインでは,以下のように規定されている。
インターネット上で申込を受けて行う商品等の販売は,オークションも含めて特定商取引法上の通信販売に該当する。
したがって,規制対象になるということは,必要な販売にかかる表示をせず,返品特約の表示等もあいまいであったり,申込若しくは契約締結を消費者が容易に認識できない設定であったり,誇大広告をしていれば,行政指導,処分及び厳罰の対象になる可能性。 クーリングオフ,中途解約制度(特定商取引法)において,販売業者とは,販売を業として営む者の意味であり,「業として営む」とは,営利の意思を持って反復継続して取引を行うことをいう。
営利の意思の有無は客観的に判断される。
例えば,転売目的で商品の仕入れ等を行う場合は営利の意思があると判断される。
「営利の意思」及び「反復継続」は,インターネット・オークション以外の場における取引も含めて総合的に考慮して判断され,例えば,インターネット・オークション以外の場(インターネット,店舗を問わない)における事業者が,その事業で取扱う商品をオークションに出品する場合は,その数量や金額等にかかわらず原則として販売業者に当たる。したがって,例えば,個人事業者が店舗における事業で取り扱う商品を,単発的にインターネット・オークションを利用して出品する場合は,販売業者による取引に当たる。
また,インターネット・オークション以外の場における取引の態様にかかわらず,インターネット・オークションにおいて以下のような出品をする場合は,通常,当該出品者は販売業者に該当すると考えられる。
インターネット・オークションは,これまで消費者でしかなかった個人が容易に販売業者になることができるというシステムであるが,個人であっても販売業者に該当する場合には,特定商取引法の規制対象となることに注意が必要だ。
(1)すべてのカテゴリー・商品について
インターネット・オークションでは,個人が不要品や趣味の収集物等を多数販売するという実態を考慮する必要があるが,例えば,以下の場合には,特別の事情がある場合を除き,営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として販売業者に該当すると考えられる。
本解釈指針は,こうしたインターネット・オークションの特性を踏まえて作成したものであり,その他の特定商取引法の取引類型には当てはめられるべきものでないことは当然である。)
但し,以下の基準値を下回っていれば直ちに販売業者でない,とは限らない。
商品の種類によっても異なるが,一般に,特に,メーカー,型番等が全く同一の新品の商品を複数出品している場合は,販売業者に該当する可能性が高いことに留意すべきである。
- 過去1ヶ月に200 点以上又は一時点において100 点以上の商品を新規出品している場合。(但し,トレーディングカード,フィギュア,中古音楽CD,アイドル写真等,趣味の収集物を処分・交換する目的で出品する場合は,この限りではない。)
- 落札額の合計が過去1ヶ月に100 万円以上である場合,但し,自動車,絵画,骨董品,ピアノ等の高額商品であって1点で100 万円を超えるものについては,同時に出品している他の物品の種類や数等の出品態様等を併せて総合的に判断される。
- 落札額の合計が過去1年間に1,000 万円以上である場合。
(2)特定のカテゴリー・商品について特定のカテゴリーや商品の特性に着目してインターネット・オークションにおける取引実態を分析すると,よりきめ細かい判断が可能となる。
以下に,消費者トラブルが多い商品を中心に,通常,当該出展・販売元の法人若しくは個人が販売業者に当たると考えられる場合を,「消費者トラブルの多いカテゴリー又は商品」の順に例示する。
消費者トラブルの多いカテゴリー又は商品(表)
①家電製品等
- 写真機械器具
- ラジオ受信機,テレビジョン受信機,電気冷蔵庫,エアコンディショナー,その他の家庭用電気機械器具,照明用具,漏電遮断機及び電圧調整器
- 電話機,インターホン,ファクシミリ装置,携帯用非常無線装置及びアマチュア無線用機器
- 電子式卓上計算機並びに電子計算機並びにその部品及び付属品
(家電製品等)について,同一の商品を一時点において5点以上出品している場合。
この場合の「同一の商品」とは,カメラ,パソコン,テレビ等,同種の品目を言い,メーカー,機能,型番等が同一である必要はないと考えられる。
②自動車・二輪車の部品等以下の商品のうち,部品及び付属品
- 乗用自動車及び自動二輪車(原動機付自転車を含む。)並びにこれらの部品及び付属品
(自動車・二輪車の部品等)について,同一の商品を一時点において3点以上出品している場合この場合の「同一の商品」とは,ホイール,バンパー,エンブレム等,同種の品目を言い,メーカー,商品名等が同一である必要はないと考えられる。
なお,ホイール等複数点をセットとして用いるものについてはセットごとに数えることが適当である。
③CD,DVD,パソコン用ソフト
- 磁気記録媒体並びにレコードプレーヤー用レコード及び磁気的方法又は光学的方法により音,映像又はプログラムを記録した物
(CD・DVD・パソコン用ソフト)について,同一の商品を一時点において3点以上出品している場合。この場合の「同一の商品」とは,メーカー,商品名,コンテンツ等が全て同一の商品を言う。
④いわゆるブランド品
以下の商品のうち,登録商標(日本国特許庁において登録されたもの)が使用されたものであって偽物が多数出品されている商品
- 時計
- 衣服
- ネクタイ,マフラー,ハンドバック,かばん,傘,つえ,サングラス(視力
- 補正用のものを除く。)その他の身の回り品,指輪,ネックレス,カフスボ
- タンその他の装身具,喫煙具及び化粧用具
(いわゆるブランド品)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
⑤インクカートリッジ
以下の商品のうち,プリンター用インクカートリッジ
- シャープペンシル,万年筆,ボールペン,インクスタンド,定規その他これらに類する事務用品,印章及び印肉,アルバム並びに絵画用品
(インクカートリッジ)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
⑥健康食品
- 動物及び植物の加工品(一般の飲食の用に供されないものに限る。)であっ
- て,人が摂取するもの(医薬品(薬事法(昭和35 年法律第145 号)第2条第1項の医薬品をいう。以下同じ。)を除く。)
(健康食品)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
⑦チケット等
- 保養のための施設又はスポーツ施設を利用する権利[別表第1-1]
- 映画,演劇,音楽,スポーツ,写真又は絵画,彫刻その他の美術工芸品を鑑
- 賞し,又は観覧する権利[別表第1-2]
[ ]内の数字は,特定商取引に関する法律施行令別表第1に定める指定権利の番号を指す。
(チケット等)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
以上は,インターネット・オークションにおけるあらゆる出品を網羅しているものではなく,消費者トラブルが多い商品を中心に,通常は販売業者に該当すると考えられる場合を例示するものである。
出品者が販売業者に該当するかどうかについては,上記で例示されていないものも含め,個別事案ごとに客観的に判断されることに留意する必要がある。
例えば,一時点における出品数が上記を下回っていても転売目的による仕入れ等を行わずに処分する頻度を超えて出品を繰り返している場合などは,販売業者に該当する可能性が高く,上記に該当しなければ販売業者でないとは限らない。
上記の前提として,インターネット・オークション事業者は,出品者の銀行口座番号,クレジットカード番号,メールアドレス,携帯電話契約者情報等の管理を通じて,同一人が複数のID(オークションを利用するためのもの)を取得することを排除することが求められる。(※行政びオークションサイトを経営する側の事業者は,本論点の考え方に沿って,販売業者に該当すると考えられる場合には,特定商取引法の表示義務について啓発等を行うことが妥当であろう。)